武下農園株式会社
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味を保証するという覚悟  あまおう苺産直農家物語

味を保証するという覚悟  あまおう苺産直農家物語

2018/11/20

この保証はきっと永遠に引退の日まで一生ビビる保証です。

 

気に入ってもらえなければ代品を送るか、もしくは返金いたします。

 

これを表記することが自分たちの覚悟が座ります。 恐ろしくてしょうがない。 でもこれを追求していくことが生産者としてのミッション。

味が悪くてもいいや。。そう思っている生産者は誰もいないと思います。 作る以上は誰だって美味しいものを作りたい。

でも苺はしゃべらないし、何が必要で何が不足しているかって即座に答えてくれないし、顔色一つ変えない。  数日たって、過不足の表情を見せてくる。その時はすでに遅い。

 

平成20年、地獄の3月14日 ホワイトデーの予約をすべて止めた事件があります。 取引先への苺の出荷もすべて止めて、冷蔵庫に入りきらない苺を私は田んぼに穴を掘って廃棄。。

 

すさまじい量だったので掘り切れず、藁をかぶせてもはみ出して、見た目にもよくなかったです。  親には気でも狂ったか、なぜそこまでこだわらなければいけないのか? 家族の猛反発がありました。 当然です。  生活できなくなります。

 

産直農家にとっての一番の恐れ。 それは味の低下です。  わからなかった。 なぜ味の低下が起きるのか、その理由、生理がわからないので、改善の方法もわからない。

すべてが手探りで基本の栽培技術を何度も見直し、土壌学、肥料成分分析のキットまで買って、化学式を紐解き、試験管をもって現状分析にあたりながら、収穫しては廃棄という気が狂いそうな日々を過ごしました。

 

「一週間待ってください。大事な贈り物だから、だから、どうしても出荷できないです。 申し訳ありません。 必ず味を取り戻して、大切な方に喜んでもらえるものにします。」

 

そう言い放ったくせに根拠がない。  ここからが本当の地獄でした。

 

一週間経過。。手がかりがない。 日照不足なだけなのか、、ほかに手は打てないのか。。薄い塩分を撒布したり、にがりを1000倍で撒布してみたり。  潅水後の廃液の成分分析をして、投入前の肥料の電気伝導度と廃液の差を確認したり。。思いつく限りの方法を試していく。

これだったらどうか、肥料バランスを変えては潅水した後の2時間後に試食、翌朝の試食。。。ダメ、まだ足りないんじゃないか。。ひょっとして多すぎるのか、どっちなんだ。。

 

2週間たってもダメ、3週間たったころは、もうお客さんにキャンセルの交渉をしたいとあきらめかけていた。

このころ、イチゴを捨てるにも穴を掘り切れず、冷凍保存をするという苦肉の策に出る。  皮肉にもこれが高濃度ジャムやシェイクのきっかけになることはこの時は考える暇もなかった。

 

4月になりました。もう駄目だと完全に心が折れて、仏壇の前に座り込みました。 夜も眠れなくなってました。 苺の味を保つってこんなにも地獄なのか、なんでJAやめたんだろう、なんで産直農家になんかなってしまったんだろう、俺は何のために田舎に帰ってきたんだ。。  もう駄目だ、ここまでだ。 そう思いながら先祖に詫びながら悔し涙を流していました。

 

その時に何かが聞こえたんです。

 

どうせだめならやるだけやってみろ!

 

耳に聞こえたのか、心の声なのか、わからないけど、そんなことはどうでもいい、そうか、どうせだめなら派手に試してみるか。。

 

私は潅水ポンプに走り、いつもの2倍の濃度の肥料バランスに配合を変えて、潅水してみた。  今までの常識では考えられない量だった。

 

奇跡が起きた。

何を試しても結果がわからなかったのに、格段に糖度が上がってる。 うそだろ。。まさか全然足りないレベルで自分は四苦八苦していたのか。。えーそんな馬鹿な。。

 

さらに1.5倍に上げてみた。  めちゃ美味しくなった。  信じられない。 今まで自分が学んできた常識はいったい何だったんだ。

 

しかしそれを継続すると今度は果実の先端が黒く焦げだした。。濃度障害である。 これはやりすぎ。。

 

そうしたこともあって4月中旬にお待たせしていたお客様に出荷を再開したんです。  感動を通り越した表現しようのない感情だった。

 

でもこの後、3年くらいは3月になるとやっぱり味が落ちてくる現象が避けられなくて、出荷を止める期間が出てしまう。  しかしだんだんとその期間が短くなっていきました。

 

どうしてこの味の変化が出るのか、自分が思うに地温がある温度帯を超えること、日照時間がある長さを超える3月の環境が果実への糖分の転流よりも株全体の生育に栄養を使う分が上回ってしまう分岐点が来る。  だからそれを超えた養分の供給をしてあげないと、果実へ回ってくる分がない。  しかしそれをデジタルで管理するのは試練の技。

 

何が足りないのかわからない。 これさえわかれば。。。

 

「武下君、面白いことを発見したぞ、連作不可能な野菜に雑草の灰をまいてあげたら、恐ろしく生育が強くなった!苺に試したらどう?」  波動の研究をしている友人が電話をしてきた!

 

これだ!

デジタルとアナログの融合。

 

花咲かじいさん!  枯れ木に花を咲かせましょう!  これか!

どうしてもバランスをとれなかったミネラルの欠点をなんと草木灰を水に溶いて潅水することで、味の落ち込みが改善。。

 

今では3月の味の落ち込みを防ぐことに成功して、出荷を止めることもなくなった。

 

デジタル管理だけでははかれない。 アナログの幅の広さが救ってくれた。

 

たくさんのお客様に迷惑をかけたし、なにより妻、家族に失意のどん底に叩き落してしまった。 借金も膨らみ、ほんとにすべてを失いかけた。

でもこの経験はお金じゃ買えない、二度と味わいたくない、本当に生き地獄、見えないってこんなにも恐ろしいのかと焼き印を押されたようだった。

だから負ける気がしない。 だから必ずできる。 天候不順でいかなる環境になろうともあきらめずに分析していけば、必ず突破口があると自信がついた。

 

逆境は成功の前奏曲。 ピンチはそれと同等いやそれ以上のチャンスの仮面をかぶっている。

 

まだまだこんなもんじゃない。 もっと苺は美味しくなる。

いざ、苺の頂へ

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